雲一つない、爽やかな秋晴れの朝。
こんな日はとっとと学校をさぼって、十代目と一緒に公園ででも熱くファミリーについて語るのがいいな…。
と、思ってたのに。
そんな思いもむなしく同日午後4:26、獄寺は大分人も少なくなった教室で人を待っていた。
しかもその待ち人は彼が慕う十代目ではなく、なんとその思い人、笹川京子。
「ったく、やってらんねー…。」
なぜこんな状況になったのかというと、それは英語の授業にさかのぼる。
スピーキング&リスニングの練習として二人一組での英語会話とやらが課題になり、
獄寺はなんと京子とペアになった。
しかも明後日、クラスの前で順番に発表しなければならないということで、
今日はこれから居残り練習。
普段の彼ならこんな課題、当然のようにさぼるところだが相手が笹川京子とあってはそうもいかない。
(笹川に迷惑がかかると十代目が悲しむからな…。つーか、やっぱり
十代目が笹川と組んだ方がよかったんじゃねーか?)
ペア決めはくじだった。
こっそり自分の番号と敬愛する十代目、ツナの番号とを交換することもできた。
でも獄寺はそれをしなかった。
十代目が喜ぶ、そうわかっていてもそれが自分でなく別の人間と一緒にいられることの喜びだと思うと
苦しかった。
「…十代目。」
獄寺がそうつぶやいたとき、教室の戸がガラッと空いて栗色の髪の少女が息を切らせて入って来た。
「獄寺君!ごめんね。掃除当番長引いちゃって…。」
「あー…。別に。とっとと終わらせて帰るぞ。」
「うん!そうだね。早くやっちゃおう!」
無愛想な俺の態度にもひかずに満面の笑顔を向けてくる。
本当に、誰から見ても「カワイイオンナノコ」だと思う。
ほとんどしゃべったことはねーけど、笹川がいるとその場が明るくなることだけはわかってる。
十代目がお好きになるのも納得だ。
そんなことを考えているとじっと見ていた視線に気付いたのだろう、
笹川がもの問いたげな顔を向けて来た。
「獄寺君?」
「何でもねー…。とりあえず話、考えるぞ。」