学校とか、公園とか、商店街とか。
獄寺君のいそうなところはひととおり探しまわったけど彼を見つけることは出来なかった。
がっくり肩を落とした俺が家に帰ると、まだみんな待っていてくれた。
獄寺君と、そして俺のことを心配して。
「もー獄寺さんたら!!こんなにツナさんに心配かけて!来たらお仕置きです!」
「ガハハハハハ!獄寺はランボさんに恐れをなして逃げたんだもんね!」
「まーまー、ツナ!あいつのことだからすぐまた十代目〜〜!!って言って出てくるって!」
みんな、獄寺君のこと心配してる。でもそれ以上に俺を気遣ってくれている。
それが嬉しくて泣きそうになった。恥ずかしいから泣いたりなんかしないけどさ!!
結局、待っていても獄寺が来る訳でもないのでこの日はお開きになった。
一日大騒ぎして、走り回ったせいか、片付けをしてシャワーを浴びると猛烈な眠気が襲って来た。
(まだ寝ちゃだめだ…)
どうしても、獄寺君と話したい。
このまま明日になっちゃって、明日も君と会えなかったら。
明日だけは、君と会いたい。君にお祝いして欲しい。
そう思っていたのに気がついたら俺の意識は遠のいていた。
…コンコン
…コンコン
…コンコンコンコンコン!!ドンドン!!
「…何…?」
すっかり寝入ってしまったようだが窓の外から聞こえてくる怪しげな音によって
俺は夢の中から連れ出された。時計を見ると時刻は23:18。こんな時間に窓を叩いてくる人なんて、泥棒か…
「十代目〜〜!!!開けて下さい!!!」
泥棒か、獄寺君しかいないじゃないか。俺はあわててかけよって窓を開けると、すぐそこに獄寺君が居た。
「ご、獄寺君!!!何やってるのさ!!!」
「十代目〜〜!!お会いしたかったです!!!…うわわっ!?」
興奮して飛び上がって、あやうく屋根から落ちそうになる獄寺君を部屋の中までひっぱりあげた。
まったく、どれだけトラブルばっかり起こすんだよこの人は…。
「こんな時間に何やってるのさ!しかも窓から!!危ないよ!!」
「スイマセン、玄関から入ったらお母様を起こしちまうし、十代目のお部屋はまだ灯りがついていたので大丈夫かなって…。
お騒がせしてスイマセン。」
獄寺君はしょぼんとして、うなだれてた。反省している子犬みたいに。でも、俺は怒ってる。
「お騒がせしたのは今のことじゃないだろ…。」
「え?」
「どうしたのさ!最近、全然一緒に帰ってくれないし、急に休むし、今日の誕生パーティーだって来てくれないし!!!
みんな心配してたんだよ!!」
「一緒に帰ってくれない」はないだろ…!!!カップルじゃないんだから!!!
と、言ってしまってから自分の発言に顔から火を吹きそうな恥ずかしさを感じるツナに対して
獄寺はきょとんとした顔をして言った。
「あれ?リボーンさんから聞いてませんか?」
「え?」
「俺はリボーンさんからの紹介でバイトをしていて、今日のパーティーには参加しない旨お伝えしてあったのですが…」
「へっ?」
リボーンからの紹介??アイツ、そんなこと何も言ってなかった。
「どういうことだよリボーン!!!」と、ハンモックの上で寝ているはずのリボーンに向かって振り返ると
そこには「夜は静かにしろ」と書かれた紙と共に相変わらず目を開けたまま眠っているリボーンが居た。
睡眠を邪魔された時のリボーンほど恐ろしいものはない。うっかりすると銃口をつきつけられそうだ。
俺たちはとりあえずボリュームを落として話すことにした。
「リボーンからの紹介でバイトって…。そもそも何でバイトなんかしてたの?」
「え、いやそれは…。俺が金貯めたいって言ってたらリボーンさんがいいバイト紹介してやるって…。
リボーンさんの行きつけでエスプレッソが美味い店があって、ちょうど人を捜してるし割がいいからって
紹介してもらったんです。」
あんなカフェに行きつけの一歳児って何ーー!?
と突っ込みたい気持ちを抑えて、俺は獄寺君に尋ねた。
「じゃあここのところ急いで帰ってたのも全部バイトのため?」
「ハイ…。本当に十代目をお送りせずに帰るのは心苦しかったのですが…。
どうしても毎日働かないと足りなくて。」
「何でそんなに…?何か欲しい物でもあったの?」
「それは…」
獄寺君がちょっと逡巡するようなそぶりを見せたとき、突然後ろからハンマーが飛んで来て俺の後頭部にヒットした。
「いっつ…」
「ごちゃごちゃうるせーぞ。今何時だと思ってるんだ。」
「リボーン!!」
「リボーンさん!!」
「獄寺か。ちゃんと持って来たか?」
「ハイ!ここに…。お誕生日おめでとうございますリボーンさん!!」
そう言って獄寺君が渡したのはエスプレッソ用の豆。何でもフツーには売ってなくて、
あのカフェで働いている人だけがもらえるのだとか。
お気に入りの豆を手に入れて満足したのか、「じゃあ俺は寝るぞ。静かにしろよ。」
そう言い残してリボーンはまた眠りについた。
「じゃあ獄寺くんは…リボーンに頼まれてエスプレッソ豆をもらうために働いてたの?」
「ちっ違うっス!俺は…その…」
ちょうどそのとき、俺の机の上のデジタル時計が12:00を指した。それを見た獄寺君が急に嬉しそうな顔をして言った。
「誕生日おめでとうございます十代目!!!」
そう言って獄寺は俺に小さな紙袋を差し出した。綺麗に包装された、そして大きさの割には重量感のある袋。
「え…」
「よかったっス!もうほんとに十代目のお誕生日にも間に合わないんじゃないかと思っちまいましたよ!」
獄寺君に促されてプレゼントを開けてみると、それは…シルバーのリング。
どこかで見た覚えがある…。そうだ、俺が前に、獄寺君と一緒に歩いていたとき見つけてカッコいいなっていったやつだ。
でも格好いいって言っても、きっと獄寺君に似合うだろうなと思ってこぼれた台詞。
まさか自分が身につけるとは考えてなかった。俺…アクセサリなんて似合わないし。
でも獄寺君はそんな俺の戸惑いを無視してすごく嬉しそうに言った。
「前に十代目が欲しいっておっしゃってたアクセサリです!!俺、十代目がアクセサリとか興味あると思ってなくて…
すごく嬉しかったから覚えてたんです!!」
「獄寺君…まさか。これを買うためにバイトしてたの??」
「ハイ!もちろんです!!…俺、恥ずかしながら十代目に何をさしあげていいか
わからなくって…。変なモンあげても邪魔だし、十代目が欲しがっていた物なら間違いねーと思って。
間に合ってよかったです!気に入っていただけましたか?」
獄寺君は、本当に嬉しそうだった。このリング、見かけたのはいつだっけ?
数ヶ月前、確か、俺たちが林間学校に行った時。
俺こそ…俺こそ獄寺君の誕生日にこれあげたいなって思ったんだ。でも高過ぎて諦めた。
それなのに…なんで。なんで君は。
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