「じゃあ十代目!!お先に失礼します!」
そう行って獄寺君は足早に教室を飛び出て行った。
俺は待って、という暇も与えられずに君の後ろ姿を追うばかりだった。
「珍しいね、獄寺君がツナ君置いて帰っちゃうなんて。」
京子ちゃんが俺のとなりで不思議そうに首をかしげる。
「いや、そうでもねーぜー。ここ一週間くらい獄寺のやつずっと忙しそうなんだよなー。」
そう、山本が指摘した通り獄寺君はこのごろ忙しそうだ。
授業が終われば、いや終わるか終わらないかのうちに教室を飛び出す日もあるし、
また疲れているのか昼休みにも寝ていることが多い。
確かに授業が終われば(終わらないうちに帰ることもよくあるけど)いつ帰ろうとそんなの獄寺君の自由だ。
それはわかってる、けど、ちょっと前まであんなに
「十代目の掃除が終わるまで待ってます!!」とか「補習なら俺も出ます!!」とか言っちゃって
俺が帰るまで真っ暗なったって待ってた人が急に先に帰り出したら誰だって不思議に思うだろう?
しかも以前は必ず一日一回は学校が終わった後もメールを送って来たり電話をかけて来たり
一緒にいられなくたって何かしらのコンタクトをとっていたのに近頃はそれもない。
本当に、君の行動は突然過ぎて俺には理解できないことが一杯だよ、獄寺君。
俺、君に何かしたかなあ?
翌朝、一限目が始まる時間になっても獄寺君は学校に来なかった。いつもなら、休むときには必ずツナに連絡があるのにそれもない。
「獄寺。獄寺!!…またサボリか。次、…。」
(獄寺君がいないだけでサボリなんて決めつけるなよ…。)
心の中で教師に悪態をつきながら、ツナは少し前の自分のことをふと思い出した。
楽しいことが何もなくて、学校を休んでばかりいた自分。
何かと理由をつけては早退もしていた自分も同じように教師から「またサボリ」と決めつけられていただろう。
そんな自分が変わったのは獄寺が現れてからだ。
自分を誰よりも慕い、俺のいいところをいっぱいいっぱい見つけてくれる獄寺君。
聞いてるこっちが恥ずかしくなるような、でも嘘のないまっすぐな言葉をくれる獄寺君。
ダメツナなんてレッテルや風評を気にせず、(むしろぶち壊しながら)接してくれた獄寺君。
君に会って俺は自信をもらった。君といると怖いことも多いけど、嬉しいことのほうが何百倍もあった。学校生活も楽しくなった。
(どうしたんだろう…。)
獄寺の行動の理由を考えてみたが見当もつかない。俺は獄寺君のことを考えていてすっかりうわの空で、教師が読み上げる
早口の英文なんて全く耳に入ってこない。
結局その日獄寺は学校には来なかった。
次の日の朝も獄寺は来なかった。
「どーしたんだ?あいつ。ツナ何も聞いてねーか?」
山本もさすがに心配になったらしくツナに尋ねてきた。でも、俺も何も知らないとしか言えない。
理由の分からないことに対する不安を覚えながらとりあえず授業の支度をしていると、女子達が騒いでいる声を拾った。
「え〜!!獄寺君が〜??」「まじまじ!!ちょーかっこよかったよ!あれ絶対獄寺君だって!」
獄寺君の名前が女子同士の話題にのぼるのはよくあることだ。そしてその度に俺は話を聞き取ろうと神経を集中させるのだけれど
今日はそんな必要もないくらい彼女達は大声で騒いでいた。
「なんかあったのかな?俺、ちょっと聞いてくるわ。」
そう言って山本は女子たちがたむろっている辺りに向かっていった。こういうときナチュラルに女子の会話に入れる山本はすごい。
遠巻きに見ていると、女子達はやたら嬉しそうで興奮してて、山本はめっちゃびっくりした顔してる。
…何を話してるんだろう。獄寺くんに何があったの?