…気まずい。
さっき言い争いかけたのが後をひいていて、獄寺君に話しかけられない俺は
とりあえず目の前にでんと積まれたパスタを口に運んだ。
(…それにしても多いよなあ。…うん?)
「おいしい!」
何の変哲もないと思った唐辛子とオリーブオイルのパスタ(ペペロンチーネっていうんだって獄寺君が教えてくれた。)なのに
すっごくおいしくて大分お腹が空いていた俺はすごい勢いで食べてしまった。
「まだあるからよかったらもっと食えよ、ツナ。
うん、今日のは本当に美味く出来たよな!ラッキーだぜツナ〜。昨日はけっこうひどかったからな。な、獄寺!」
「ちっ…うるせー。」
「え、昨日はって…。昨日もパスタ食べてたの、山本?」
「昨日どこじゃねーよ、もう一週間連続毎晩パスタだよ。」
「一週間も!??」
「お、おいこら山本!その話は…」
「まあこうしてツナが来ちまったんだからいいじゃねーか。獄寺がどうしてもうまいパスタを作れるようになりたいって
言い出してさ。そんなもん簡単だと思ったけどなかなかうまくいかねーし、
まーまーうまくいったと思っても獄寺が納得しないしさー。
結局連日特訓する羽目になっちまったんだよ。」
「袋に書いてある説明どおりの時間でつくってもなかなかうまくいかなくてですね…。アルデンテを目指すんですけど
どうしても茹ですぎてしまったんです。」
「だから感覚と勢いのが大事なんだって!まあ今日のなら合格だろ。」
そうか、獄寺君はパスタを茹でる特訓をするために毎晩夕飯を食べずに帰ってたんだ。でも、
「どうしてそんな急にパスタをつくりたくなったの獄寺君…?」
そんな素朴な疑問を口にすると、獄寺君は急に赤くなり、ぼそぼそと小声でしゃべりだした。
「…十代目に召し上がっていただきたかったんです。」
「俺に???」
「この間ファミレスで一緒に昼飯食ったとき、十代目がパスタを食べたいっておっしゃっていたじゃないですか。
パスタくらいなら俺にも出来るだろうと思って作り始めたんですが、まじーもんしかできなくて…。
恥ずかしながら山本に助けを求めたんです。」
「この間ファミレスで……あっ!」
そうだ、あのとき俺はミートソースを頼んだけど、もっとおいしいパスタが食べたいなあって言ったんだ。
母さんがパスタを作ってくれるのはいつもお昼用で、平日はなかなか食べられないし…。
獄寺君そんなこと覚えてたんだ!
「もしかして、そのためにここのところいっつも急いで帰ってたの?」
「はい。お母様と十代目のお心遣いは大変ありがたかったのですが、早くうまくなって、
十代目に御馳走してさしあげたいと思いまして…」
俺は、自分の顔が熱くなって紅潮していくのを感じてた。
恥ずかしいから、じゃなくって嬉しくて。
隠れて料理の特訓とかって、何でそんなかわいいことするんだろう獄寺君は。
山本がいるのも忘れて獄寺君に抱きつこうとした時、携帯の着信音が鳴りだした。
タイミング悪いな…と思いながら画面を見てみると、そこには「うち」の表示が。
慌てて出てみると聞き慣れた、高いけれどドスの聞いた声。
「…おいツナ。今何時だと思ってるんだ。ママンの作ってくれた食事はとっくに冷めちまったぞ。」
「リッ、リボーン!!」
「何を急いでたんだか知らねーが、俺はママンの愛情を無駄にするような奴は容赦しねーぞ。」
「かっ、帰る帰る!!すぐ帰るよ!」
「十代目、スイマセン…」
電話を切るとすぐ、俺の様子から電話の内容を察知したのだろう、しゅんとした様子の獄寺君が謝ってきた。
「何で君が謝るの!俺が勝手に押し掛けて来て、パスタ食べるって言ったんだから。
でもとりあえず急いで帰るね。後でまた片付けにくるよ。」
「とんでもない、片付けは山本にやらせますから!気になさらなくて結構です!」
「ああ、そんくらいやっとくから気にすんなって!」
俺も片付ける、と主張したけれど結局二人に押し切られ、
俺はたった30分で獄寺君のマンションを後にすることになった。
獄寺君はまた律儀にマンションの入り口まで一緒に来てくれて、本当は俺の家まで送って行きたいけど
片付けがあるのでスイマセン!と言った。
俺はその心底申し訳なさそうな顔をしている獄寺君の目をみて言った。
「パスタ、本当においしかったよ。でも、ちょっとだけ不満。」
「あ、やっぱりまだご満足いただけなかったですか…スイマセン。また明日からさらなる特訓を重ねます。」
「山本と?」
「あ、ハイ、そうです。くやしーけどやっぱりあの馬鹿、寿司屋の息子なだけあって
結構料理うまいんで…」
「それが不満。」
「え?」
「このパスタって俺のために作ってくれてるんだろ?なのに俺より山本の方が多く食べてるじゃん。
だから明日からは、俺と二人で特訓しよう?山本と一緒に作った回数と同じだけ。約束だよ!」
自分で言ってて恥ずかしくなるような子どもじみた嫉妬。
でも、仕方ないじゃんそう思っちゃうんだから!
言い終わった途端に恥ずかしくなり、俺はくるりと方向を変えて
「また明日ね!」といいながらうちへ向かって走り出した。
走りながら気がついたけど、よく考えたら俺、獄寺君にちゃんとお礼を言ってない。
明日、一緒にパスタを作りながら言おう。ありがとうって。
君が俺のために料理特訓なんかしてくれちゃってることが、
どんなに嬉しかったかって。
それで、今度は俺が君の好きな物を特訓するんだ。
明日も、明後日も、これからずーーっと。
君と一緒に。
END (→あとがき)
Presented by Rayri Minazuki on 5.Oct.2008