「…十代目??」
久しぶりに会った恋人がキスしようと顔を近づけてくる。
そんな完璧なシチュエーションの中で俺は獄寺君の顔を押しのけた。
「どう…されたんですか?」
「…香水の香りがする。」
「!」
そう、それは普段彼が纏っている香りとは全く違う香り。女性が好みそうな香水の香り。
「…今まで誰といたの?」
「……。」
「答えろよ!!!」
「…ハイ。アリアニコファミリーがボンゴレを狙っているとの噂を聞き、詳細を確かめるために
素性を隠してボスの愛人と会っていました。」
「それでその女と何したの?」
わかってる。獄寺君はどんな女性でもはっと目を奪われてしまうほどきれいな顔立ちをしていて
情報の見返りに獄寺君と一夜を過ごしたがるオンナも一杯いるってこと。
それだけど!!
「何だよ!それでその女と今まで一緒に居たってワケ?
俺が4日ぶりに君に会えるって楽しみにしてたのに、
君は何処の誰だかわかんない女とお楽しみだったんだ!」
「じゅ、十代目!!でもそのおかげでアリアニコの反逆がほぼ間違いないとつかめました。
夜が明けたらすぐにでも…。」
「そんなこと聞いてない!!」
わかってる。
君はボンゴレの、オレのためにその女と寝て、敵の情報を手に入れて、俺を守った気になってるんだろう?
でも俺は、そのおかげでこんなに苦しいんだ。
獄寺君が、女と一緒に居たってだけで。俺以外の人間と一緒に夜を過ごしてたってだけで死にそうになる。
「ねえ隼人。」
「はい。」
「俺は、君と一緒に居る時間が一番幸せ。
逆に俺以外の誰かが君と一緒に居たってだけで不快感でいっぱいになる。」
「…ハイ。」
「君が『俺のため』にすることで、俺を不愉快にするの、やめてよね?
君は、俺が君のことをどれだけ好きか知ってるだろう?」
そう言うと獄寺は一瞬顔をこわばらせた後、ツナをぎゅっと抱きしめた。
「…香水の匂いがするってば。」
「ハイ、申し訳ありません、十代目。すぐシャワーを浴びてきます。
でもその前に少しだけ…。」
「…なんだよ。」
ツナがその束縛から逃れようとすると、獄寺はツナの細身の体をまた自分のほうに引き寄せた。
「俺にとってもあなたと居る時間が一番幸せです。
あなた以外の人間と過ごす時間なんて、俺には何の価値もないんです。
あの女も、もう顔も何も覚えてないです。覚える気もない。
俺には、あなただけがリアルなんです。」
…本当に、君はいつまでたってもかわらない。
そんな甘いささやきみたいな台詞を当然のように言ってきて、俺の怒りを融かしてしまう。
俺は獄寺君の腕の中で一瞬、彼の言葉と体の温もりを味わってから冷たい声で言った。
「早くシャワー浴びてきてってば。この匂いが不愉快だ。」
「!…スミマセン。本当に、申し訳ありません…。失礼します!!」
泣きそうな顔をしてぱっと俺から離れ、足早に立ち去ろうとした獄寺君の背中に向かって
今度は思いっきり甘えた声で付け加えた。
「それですぐに戻ってきてね?4日間の埋め合わせ、してくれるよね。」
END (→あとがき)
Presented by Rayri Minazuki on 29.Sep.2008